書き味を維持する、習字の筆の洗い方

書道用具の雑学大筆の洗い方,小筆の洗い方

習字(書道)の筆も消耗品なので、使っているうちに命毛(先端に出ている毛)が無くなったり、墨が固まって書きにくくなったりします。そうなると、穂先が割れたり、細い線など繊細な表現が難しくなったりして、買い替えを余儀なくされます。
今回は、普段の筆の洗い方を詳細に説明します!

【予備知識】2つのポイントを押さえよう

予備知識① 筆の毛は温水で洗わない

必ず習うことではありますが、筆は温水で洗わず水で洗いましょう。冬場であっても。
習字で使われる筆の毛は馬の毛で作られているのが基本です。柔らかいものだと羊の毛を使っているものもあります。動物の毛を使っているため、温水で筆を洗うと毛が傷み、切れ毛の原因になります。

予備知識② 根元を洗うのがポイント

習字の筆を置くときは、ほぼ100%斜めに置くはずです。
そうすると、毛を伝って墨が根元に向かって流れていきます。根元に墨がたまっているので、筆を洗う時は穂先ではなく、根元を意識して洗いましょう。洗い方が不十分で根元の墨が固まってしまうと、穂先が割れる原因になります。

書き味を維持する、筆の洗い方

筆の洗い方

上記の2点を必ず押さえて、筆を洗いましょう。

手順① 筆の付け根を持つ

書き味を維持する、筆の洗い方①

筆の付け根を親指と人差し指で軽く持ちます。
このとき、指先に力を入れて根元を潰さないようにしましょう。
付け根を持つ理由は、根元を重点的に洗うためと、根元の毛がねじれないように押さえておくためです。

手順② 筆管に水を当てて洗う

書き味を維持する、筆の洗い方②

筆の付け根を持ったまま、筆管(書くときに、筆を持つ部分)に流水を当てます。このとき、筆の穂に流水を直撃させてはいけません。また、温水で洗うのは避けましょう。
洗面台には穂の真ん中辺りを当てて、穂の真ん中~根元にたまった墨を落とします。

筆の穂をねじらないように、筆ごと回しながら満遍なく洗います。

書き味を維持する、筆の洗い方③

洗い始めの時は墨が出てきましたが、1~2分ほど洗うと墨がほとんど出てこなくなります。ここまで洗えれば、十分です。

手順③ 水気をしっかり切る

書き味を維持する、筆の洗い方④

筆の穂は水気を嫌います。必ず、水気はしっかり切ってください。
手で包み込むように握り、水を絞り取ります。半紙を使って絞ると、効率的に水気を切ることができます。
このときも、穂をねじらないようにしましょう。

手順④ 筆の穂先をまっすぐ整える

書き味を維持する、筆の洗い方⑤

筆の穂を根元から毛先にかけてやさしく撫で、穂先をまっすぐ整えます。
このとき、毛の向きががバラバラにならないように、まっすぐ揃えます。毛がからまると、筆の穂先が割れる原因になります。

手順⑤ 風通しの良い日陰で吊るす

書き味を維持する、筆の洗い方⑥

写真のように、筆の毛が新品のようにまっすぐ整ったら、穂先を下にして、風通しの良い日陰に吊るします。これで、絞り切れなかった水気も切ることができます。筆には吊るすための輪っかが付いているので、そこに引っかけるか、洗濯ばさみで挟んで洗濯物のように吊るすのが手軽かと思います。(洗濯物と一緒に乾かすのは、乾きにくくなるのでおすすめしません)

学校や教室に通っていたりするとやってしまいがちですが、決して洗ったままの筆を筆巻きや道具箱の中に放置してはいけません!湿気で筆の毛が傷み、切れ毛の原因になるので、必ず筆を乾かしましょう。それから、買ってすぐの筆には透明なキャップが付いていて、それをはめて保管する人がたまにいますが、洗った筆にキャップをしてはいけません!これも湿気で毛が傷みます。
キャップは販売時に筆のダメージを抑えるためにあるだけなので、使うようになったらさっさと捨てましょう。

小筆の洗い方

小筆(名前を書く筆)の洗い方は人によって違っていたりします。大筆同様、流水で洗う人もいれば(個人的にはこっち派)、洗面台の水滴で軽く洗う(大概のテキストや先生はこっちで教えることが多い)場合もあります。
小筆は1回で使用する時間が短いので、大筆ほど時間も水も使わずに洗えます。小筆の場合、穂先の半分ほどおりていれば十分書ける(むしろ、おりすぎていると書きにくい)ので、穂先にしか神経が行き届きにくいですが、小筆も穂先よりも穂の真ん中あたりに墨が溜まりやすいので、穂の真ん中を意識して洗いましょう。

ここでは流水でなく、オーソドックスとされる「洗面台の水滴」での洗い方を紹介します。
流水で洗うよりも、節水になりますよ。

※2021年4月6日追記
改めて、小筆の洗い方に特化した記事を作成しました。オーソドックスな水たまりで洗う方法の他に、濡れティッシュを使う方法も紹介しています。

手順① 根元を持ち、水たまりに穂の真ん中を当てる

書き味を維持する、小筆の洗い方①

大筆同様、筆の根元を持って洗います。根元から毛が絡まると、穂先が割れてしまいます。
洗面台にできた水たまりに(水は流さなくてOK)、穂の真ん中をちょんちょんと当てて墨を落としていきます。
穂がねじれないよう、筆ごと回しながら満遍なく墨を落としていきます。

書き味を維持する、小筆の洗い方②

穂先よりも、穂の真ん中の墨を落とすことに専念しましょう。穂先よりも真ん中の方が墨が溜まりやすく、そこを洗うのを疎かにすると、小筆の大半が墨で固まってしまいます。
上の写真のように、墨がほとんど出てこなくなったら十分です。

手順② 穂先を指で整え、日陰で吊るす

書き味を維持する、小筆の洗い方③

指先で水気を絞り取り、穂を指で撫でるようにまっすぐ整えます。このときも、穂先がねじれないように注意してください。
穂先を整えたら、風通しの良い日陰で吊るします。
小筆も大筆同様、湿ったまま保管しないでください。必ず筆巻きや道具箱から出して、風通しの良い所に吊るしましょう。

筆が墨で固まってしまったときの対処

筆の洗い方が不十分で、墨で固まってしまった場合の対処法は下の記事にまとめています。



筆を洗う、という点では同じですが、墨で固まってしまっている以上、洗い方もかかる時間も異なります。
参考にしてみてください!